ライ麦畑でつかまえて J.Dサリンジャー
【欧米文学】
「ミンナダイキライの断章」
DANO評価:★★★☆☆(満点は★5つ)
いわゆる最近の若者は「自分以外はバカ世代」などと言われてます。
でも、実はいつの時代も若者って、
頑固で正義感が強くて自意識が強くてわがままで
どうしようもなく、とほほな存在なのではないでしょうか。
物語はすべてホールデン・コールフィールドの口語調で進められ、
高校を退学になってから家に帰るまでの
2、3日のどうしようもない話。
「ライ麦畑でつかまえて」とは「ライ麦畑であったなら」を主人公のホールデンが
誤解して記憶していた、「ミンナダイキライ」の中の唯一の救いのようなもの。
彼の世界観は、「かっこつけるもの」「優秀なもの」「しゃれたもの」は
全て「インチキ」で「低脳」で「でたらめ」なもの。
あるところでは潔癖なのに、都合のいいところでは堕落する。
最初にこの本を読んだときは高校生のときで、
「変わった小説だなぁ。」という感想だったように思います。
次が大学生のころ、教材として読み直し「退屈だな。」と思いました。
そして結婚して、現在、読み直して、非常にツラかった...。
たぶん、コールフィールドのような子供が身近にいても、
どんなアドバイスもしてあげられないような気がしたからです。
かくいう私も、高校生の頃は勉強大嫌い、家もスキじゃない、
世の中いい加減でバカなことばっかりだと思い込んでいたタイプでした。
その時は、自分は精神的に自立していて、オトナで、本当に大事な
ことが分かっている気になっていたようです。
だからといって、オトナに諭されるようなことを言われると
従順なふりをして、「おっしゃる通り」と言っていました。
こうして自分の力でお金をかせげるようになり、自分の家族をもつ
ようになった今でも自立しているのかどうかあやしいもんですが、
今ではこう思うのです。
「他人を認められるようになったら、他人を許せるようになったら。」
それがオトナ。
一週間に一度は「ミンナダイキライ」だと思っていた、10年前の私は
まごうことなきホールデン・コールフィールドその人であったように思います。
(2006.05.15)
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